旅立ち

先日、懐かしい人から一通のメールが届いた。
１０年程前にお付き合いしていた彼から。彼とは地元が一緒で家も数分の距離にあったので、毎日と言っていい程会っていた。私が先に社会人になっても変わらず続いていてかなり長く付き合っていたのだけど、色んなことがあり、結果的に私が彼に別れを打ち明けてしまった。

彼は１００％信頼のおける、真面目で優しい好青年だった。こんなこと言うのもなんですが、世間がほっておくタイプでもないのに、それにおぼれず、実直なところが、本当に貴重な存在だったと思う。こういった類の人間にはめったに出会わない。
そんな彼からの突然のメールがこれだった。

「ついに明日、結婚式。俺は新たな一歩を踏み出すが、あの時の思い出はずっと残っているんだろうな。あの時があるから今の俺がある。お互いの人生頑張っていこうな！」

そっか、いよいよ結婚しちゃうんだ。このメールの前に一度結婚の報告は受けていたけど、その時はなんだか漠然と事実を受け止めただけで、現実味はなかったけど、「明日」と言われてしまうとほんとなんだ、っていう気持ちになった。

「まさかこの子と付き合うことになるとは、結婚するとは思ってもみなかった」

と、気を遣って言ってくれた言葉の裏には彼の性格を知ってる私はどこかでそう言いつつも「彼女のことを守りきるんだろうな」とは思ってたんだけど。

自分の人生かけてまで、相手のために尽くそうと思う人って、これから現れるんだろうか。逆に私のことをそういう存在と思ってくれる人って現れるのだろうか。
変な知恵と経験が邪魔をして、ちゃんと相手を選べなくなってるんじゃないかと、なんだか自分が、恐くなる。彼とどうこうじゃなく、あの頃の気持ちがどこか行ってしまったのかなぁと悲しくなる。
でも、そんな彼と出会って、そのままうまくいっていたらそれはそれで、「甘え」が出てしまって、彼のそんな気持ちに気づかなかったんだと思うので、彼とのことが思い出となった今だからこそ、分かることだったのかもしれない。

好きな人がいて、その人が何を考えているんだろう、今楽しいのかな、悲しいかな、私のことどう思ってるのかな、とかいつも相手の気持ちを探っているんだけど、見えないことってないかな。私はそんな時、すんなり自分の気持ちを素直に表現してくれたこの彼を思い出す。そしてまず私が素直にならなきゃダメなんだなといつも考えさせられる。

幸せになってね、楽しい思い出をありがとう。
そして私も新たな一歩を踏み出すよ。